ショートヒストリー東洋大学
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ら、特別に批評はしていません」つぎに視学官は具体的に、前年六月に立憲政友会の星亨を暗殺した伊庭想太郎の例をもち出した。伊庭の動機は、星の汚職問題にあった。隈本「伊庭のしわざ(暗殺)はどうですか」中島「いけません」隈本「彼の動機は善なるものではないですか」中島「いいえ、彼の動機は単に主観的・感情的で、善なるものではありません」隈本「そうですか、動機が善ならば弑逆(主君を殺すこと)も悪にならないのではありませんか」中島「弑逆も絶対的にいけないのではありません。ただやむを得ざる非常の場合もあり、その動機が善ならばこれを是認することもあります。日本ではこのようなことはありませんが、イギリスのクロムウェルが議会軍を率いて王の軍隊を破り、チャールズ一世を処刑したことは、西洋の歴史家の是認を受けています」隈本「グリーンも、そういうふうに説明していますか」第三章 「哲学館事件」69        

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