全国巡講の結果(明治二四)年の哲学館の「寄付金規則」は、それまでの「館友ノ制」を改正して、一円以に対し、寄付者への御礼にと揮毫(書)を持たせた。この全国巡回の計画は、哲学館の講義録や機関誌『天則』で発表された。全国に広がる哲学館の館外員の協力を得るためである。一八九〇(明治二三)年一一月二日、円了はこうして哲学館の存亡危機を打開するために、全国巡回講演(巡講)という旅に出発した。各地で講演や演説を終えてから、井上円了は哲学館への支援をお願いした。一八九一下は寄付者、一円以上は創立員、三円以上は館友、一〇円以上は館賓、五〇円以上は特別館賓として、寄付金額に応じて束脩(入学料)の免除や雑誌・書籍の贈呈という特典を設けた。しかし、この募金活動は、予想に反した結果に終わった。『哲学館専門科二十四年度報告』に、一八九〇年一一月から一八九一年一〇月までの一年間の募金のことが記されている。円了はおよそ二〇〇日をかけて一八県・一一九の市町46
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