「日本主義と宇宙主義の大学」ヨーロッパでは、オックスフォード大学、ケンブリッジ大学、パリ大学、ベルリン大学などで、東洋学を中心に学問や教育および宗教の状況を調査した。すでに述べたように、円了は幼少のころからの教育によって、当時の日本人としては、世界に関する知識を豊富にもっていた方であった。しかし、実際に一年間をかけて地球を一周して、欧米諸国を見聞したとき、円了は「欧米各国のことは日本に安座して想像するとは大いに差異なるもの」といい、知識による差異よりももっと大きな、日本と欧米諸国との差異を感じたという。そして、この海外視察が帰国後に、哲学館の改良となって反映され、哲学館が大学への道を歩み出すきっかけとなった。一八八九年七月、帰国した円了は、まず「哲学館改良の目的に関して意見」を発表した。その内容は三つに分かれていた。第一は、欧米各国ではその国で発達した学問・芸術(たとえば言語学、文章学、歴史学、宗教学第二章 「日本主義の大学」35
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