ショートヒストリー東洋大学
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た経験がある。現在の東洋大学の基礎は哲学館時代にあり、その哲学館を危機から救ったのは、すでに述べたように、全国各地の人々の寄付であり、この社会的な恩義は忘れがたい歴史的な遺産である。一九九九(平成一一)年、東洋大学は創立者の没後八〇周年を記念して、塩川正十郎理事長・菅野卓雄学長の提案から、「創立期に受けた支援に対する御礼と、創立者の精神を生かした社会貢献」をめざすことにした。そして、井上円了記念学術センターによって立案されたのが、全国への「講師派遣事業」であった。全国の市町村を単位とし、自治体・教育委員会・商工会・農協などの公共的団体が開催する講演会や研修会に、教員を講師として派遣するもので、派遣の経費はすべて大学が負担した。東洋大学の「一一〇年目の御礼」として取り組まれたこの事業は、社会教育や生涯学習を求める社会の要請にこたえる新たな「大学の社会貢献」として、マスコミなどを通して注目された。六月から翌年三月までの九か月間に、北は北海道から南は沖縄まで、二三一か所の講演会に教員が派遣された。大学が創立期などの支援に感謝して御礼に出向いたのは、新たな大学の出発点にふさわしい事業であった。この事業はその後も、「東洋大学の284  

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