創立の原点を見つめて時代に立ち後れた東洋大学の姿を浮かび上がらせた。そのなかで、記念出版物として作成された一冊の新書本が大きな意味をもつことになった。一〇〇周年の記念年を総括した『東洋大学報』(第八五号)の「編集雑記」にはこう書かれている。百年の歴史と伝統を誇る本学は、この日(記念式典の一〇月二八日)を新たな旅立ちの日としてとらえ、草創期がそうであったように今後、より個性的な大学へと飛躍しなければならない。その意味からもさまざまの一〇〇周年行事は、個性化を模索する作業でもあり、意義深いものがあった。なかでも『井上円了の教育理念』の出版は、その副題にあるように「新しい建学の精神を求めて」いくために今後重要な役割を果たすことになろう。かつて本学はこのような形で井上円了や本学自身を見たことはなかったからである。なぜ『井上円了の教育理念』という一冊の本がこのようにみられたのか。この年の五月268
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