『哲学館講義録』これらの人々に教育の機会を開放し、帝国大学でしか哲学を学べないという現状を改める、これがまず哲学館の役割であると述べた。さらに、哲学館の目的は哲学者の養成ではなく、哲学を学ぶことにあり、哲学は諸学の基礎になるものであるから、社会に出て一つのことを達成しようとする人は、哲学諸科を心得ているべきであり、また教育家・宗教家になる人が学べば、専門の学問の理解を助けることにもなる。そして、哲学館での哲学研究が今日の学問上に与える利益を五点あげたが、東洋の諸学問の弊害を西洋の哲学によって克服することを中心課題としていた。それは「旧来の伝統的学問の迷夢を打ち破り、すこぶる自由な研究的批評的な態度」をもつと言われた円了の学問観を反映したものであった。こうして哲学館はスタートしたが、井上円了の教育理念の実現を支えたのは、教員たちであった。創立当初の講師・評議員の特徴は二つあった。第一点は、講師一八名のうち一第一章 哲学館の創立23
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