国大学文科大学長・外山正一、同大法科大学教頭・穂積陳重、学士会員・原坦山などのほか、帝国大学および仏教各宗の関係者など多数の来賓、総数約二〇〇名が列席した。今日でも歌人として知られる佐佐木信綱は、井上円了の『哲学一夕話』などを読んで哲学への興味をかきたてられた青年で、この創立式典に第一期生として出席した学生である。帝国大学の古典科と国民英学校に学ぶかたわら、哲学館にも通うことにしたのであるが、当時はこういう学生もめずらしくはなかった。彼は「開校当日、麟祥院へ行ってみると、本堂にだいぶたくさんの人がおりました。自分の第一印象としては、自分と同じく哲学を知ろうとあこがれている人がこのように多いのだろうかと、驚くとともに喜びました」と、そのときの感想をこう語っている。この式典で、井上円了は哲学館の目的を詳しく述べた。そこで、教育の対象者をつぎの三点にまとめている。第一晩学にして速成を求める者第二貧困にして大学に入ることが不可能な者第三原書に通ぜずして洋語を理解できない者22
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