ショートヒストリー東洋大学
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(大学の課程に進むだけの経済力のない人)、ならびに「優暇なき者」(原書を読みこなせるだけの時間的余裕のない人)のために、哲学を速く学べるようにし、一年ないし三年で論理学、心その学問とは哲学である。哲学は万物の原理を探り、その原則を定める学問で、いわば政治・法律から理学・工芸にいたるまでのすべての学問世界の中央政府にして、万学を統括する学問だからである。しかし、今日、哲学を専門に教授しているのは帝国大学(東京大学の後身)だけであり、また翻訳書が多く出ているとはいえ、それを読んだだけで原文の真意を理解することはむずかしい。そこで、それぞれの分野の学士と相談し、哲学専修の一館を創立する。これを哲学館と称する。ここでは「余資なき者」理学、倫理学、審美学、社会学、宗教学、教育学、哲学、東洋諸学などを教授する。この哲学館の教育が成功すれば、社会、国家に利益をもたらし、わが国の文明進歩の一大補助になるであろう。この文章は設立の協力を求めるために、著名人や知人に送られるとともに、新聞や雑誌にも掲載され、哲学館の教育目的を広く一般に訴える役割を果たした。円了は賛同者に対し寄付をお願いした。最終的に二八〇人から七八〇円余りの寄付創立金が集まった。20 

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