(文部省)に育った者ではないですか。一大学のことではあるが、その存在の危機に乗り出建設は文部省もすでに不認可に傾いている。工学部の建設計画は産学協同を基本理念とし、工学部として理想的内容を持ち、この計画に共鳴した教授陣も天下一流の立派な方ばかり。この工学部も完成に近づきつつあり、財政的関係でこれを見殺しにすることは、財界人としても強く責任を感ずる。そこで竹村君と二人で力を合わせて、財政的関係は責任をもって解決しようと決意した。だが、いくら資金を集めても、これを実現してもらう大学の経営責任者がいない。そこで二人の相談の結果、ぜひ君に大学の理事長を引き受けてもらいたいと思って、君に相談することにした」劒木は文部省を去って久しく、東洋大学の工学部の認可の状況も何一つ知らなかった。劒木 「これまで私は東洋大学とは何の関係もなく、またこの難局に当たる自信もありません。何とか私以外の適任者はいないでしょうか」渋沢 「僕も東洋大学には何の関係もないのです。しかし、この工学部を救うことは財界人としての責任と考えて立ち上がったのです。君は関係はないと言っても、文教の府206
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