ショートヒストリー東洋大学
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林啓け善ぜを訪ねて、たびたび大学の窮状を説明して協力を求めたとき、同社の関係者から援助者として紹介されたのが、在家仏教(法華宗)「大日本獅し子し吼く会」(以下、獅子吼会と略す)の創立者大塚日に現げであった。大塚の布教活動は全国におよび、獅子吼会の教会は約三〇、支部は約四〇を数えた。大塚は戦前から少年保護事業を志し、戦後は社会事業への貢献が評価され、宮内省から下賜金を受領し、一九四六年九月には天皇・皇后に司法少年保護事業について進講した。そのとき、何の打ち合わせもなく、立ち上がって朗々と法華経の題目を唱えて、側近の人々を慌てさせたという逸話が残されていて、それは信仰への信念を物語るものとされた。小林も、それまで大学とは無縁だったが、母校の救済のために、大塚の布教先へと日参して大学の窮状を訴えた。大塚はこう考えていた。何しろ縁もゆかりもない大学へ横合いから関係してみてもうまく行かないだろうという不安と、一方では井上円了さんの創立した由緒ある大学である。これをむざむざつぶしてしまうに忍びない。なんとか助けてやりたいが、二、三〇〇万円で助かるとい第六章 廃墟から総合大学へ181  んちんい

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