ショートヒストリー東洋大学
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また、哲学が「世間無用の学」とみなされることについて、こう反論した。欧米の文明の隆盛は、ただ政治・法律・理学・工学などの進歩によるものではない。そこには思想の及ぶところ、事物の存在するところ、それらのすべての原理・原則を論じ究めた哲学が盛んであったからである。このように、円了は哲学を重視したが、哲学会の創設はその普及のための行動の一例であった。これと同じ意図で、円了は在学中から盛んに著述活動もおこなった。雑誌に論文を発表していたが、日本にはじめて西洋哲学史を紹介した「哲学要領」、仏教とキリスト教とを対比させた「耶蘇教を排するに理論はあるか」(のちに『真理金針』として単行本となった)などは、代表的著作に数えられている。また、最初の単行本の『哲学一夕話』は、日本を代表する哲学者となった西田幾多郎などが青年の時代に影響を受けた本で、当時この本によって哲学への目を開かれた人が多かったという。第一章 哲学館の創立15    

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