「一六教授辞職事件」理の建学精神である。学祖のこの精神は、私が精神文化研究所を創立した精神とまったく合致し、今般の学長就任の交渉は井上学祖の生ける魂が、私の心に呼びかけられたごとくに感じられ、微力を顧みず、事情にとらわれることなく、起って学祖の精神を興隆すべき責任をさえ覚えるに至った。大倉学長は、「私立大学はよって立つ学是を強調し、これに基づく独特の長所を発揮するところに、溌剌たる生命」があると考え、学園興隆のために「護国精神の高揚」「学力の充実」「学制の改善」「新講座の創設」の四つの施策を打ち出した。そして、就任直後に、科外講座として福利教養講座、満州講座、武道体操講座を開設した。あえて経済的負担のかかる新講座を設けたのは、戦時の時代に適応する講座を設置し、卒業生の活動分野をより一層拡大して強化しようとしたものであった。一一月二三日に、創立五〇周年の記念式典がおこなわれた。実業界から学長を要請した背景には経営上の問題があり、新学長は校友とともにその解第五章 苦難の昇格運動161
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