「大正一二年の紛擾事件」(校友)が、幹事である一職員へ解職を勧告したことにはじまる。境野学長はこれを受けてを昇格基金に寄付することが決定され、卒業生主催の謝恩会では、一人当たり五〇〇円ずつの寄付の申し込み書が卒業生から集められた。そして、夏季休暇までに東京在住のすべての校友から寄付申し込みをすませ、とくに実業関係や宗教関係の校友に強く働きかけることが計画された。こうして教授・校友による昇格運動が再出発したころ、一つの事件が起こった。一九二三年五月のいわゆる「大正一二年の紛擾事件」と言われる事件は、一人の維持員教授陣にはかったが、教授は全員一致で反対を表明した。だが、学長はその表明に従わず、さきの維持員の勧告に従って、この幹事を解職した(紛擾とは乱れもめること)。事件の背景にあったのは昇格の募金問題で、以前からその取り扱いを含めた会計の明朗化を求める声があった。会計主任をしていたこの幹事に、監査後、解職の勧告が出されたのである(最終的に解職の理由は判明しなかった)。第五章 苦難の昇格運動143
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