ショートヒストリー東洋大学
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ば、大学の目的を達成することはむずかしい」などのように、政府・文部省に極めて慎重な態度を望むものであった。したがって、さきの「専門学校令」が現状追認型であったのに対して、この「大学令」では私立専門学校にとって、基本的にきびしい条件が設けられた。同令では「私立大学は財団法人たることを要す」としたが、その財団法人には、大学を維持するに足るだけの基本財産を定め、これを一大学につき五〇万円以上、一学部を増すごとに一〇万円以上を要すとし、「現金または国債証券、その他文部大臣の定むる有価証券」によって国に供託することが必要であった。この財産に関する条件は、校地や不動産を除けば、唯一の財源を学生の授業料収入に依存していた私立の専門学校にとって、利子を生むほどの基本財産がなかったので、きわめて過酷なものであった。また、それまでに私立の専門学校のほとんどは、非常勤の教員が主であって、専任教員をおいてこなかったが、この「大学令」に従えば、「相当員数の専任教員をおく」ことが必要であった。第五章 苦難の昇格運動133    

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