真理は哲学にありすでに、円了は福沢諭吉などのいわゆる啓蒙思想にもとづく著書を読む進歩的な青年であった。これに洋学と数学を学び、世界のことを理解し、自らの思想を発展させていた。つぎの漢詩はそのことを示すものであった。勤め励む者と怠けている者と両方同じ人間だ。万民は同等であり、等しく権利を持っている。昔は偉人が多かったなどと言うのはやめな、彼ら偉人も人間、私も同じ人間だから。長岡で見聞を広め、このように自由な思想を持った円了であったが、ここでヤソ教すなわちキリスト教を知り、『バイブル』を英語訳と中国語訳を対照しながら読んだという。しかし、文明の宗教として脚光を浴びていたキリスト教ではあったが、そこにも円了の求めるものは見つからなかった。井上円了が洋学を学びはじめた一八七二(明治五)年に、新政府は「学制」を公布した。全国に学区制を実施して小学校を五万三七六〇校設置し、その上に中学校を二五六校、大10
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