ショートヒストリー東洋大学
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減という事態の根本的な解決策にはならなかった。一〇月中旬から、事態を心配した講師や校友のなかから、新たな動きがなされるようになった。教員免許の無試験検定の再出願である。一〇月二一日、再出願への働きかけを聞いた校友有志が三四名の連署をもって、「哲学館大学が広く我が国教育界のために、この際、無試験検定の特典を得むことを希望する」という建議書を、井上円了学長に提出した。翌二二日には「同窓会臨時大会」が開催され、再出願の建議が可決され、総代二名の手から学長へ建議書が渡された。さらに、二八日付けで講師総代として、この運動の中心であった三名の講師連名による再出願に関する「勧告書」が提出され、これに続いて、哲学館事件で被害を受けた卒業生からも、学長のもとに再出願に関する建議書が提出された。しかし、これらの建議や勧告に対して、井上円了学長は「常に厄に遇えるもののために、またこれをなすに忍びず」と答え、被害を受けた卒業生や教員の問題が解決されなければ再出願はできないと言い、これらの動向に応じなかった。第四章 東洋大学へ109     

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