我々はまさに不思議の空気中に居て、不思議を呼吸して生きているといえる。この世界はすべて不思議であるから、私自身も結局は一つの不思議なものである。※『論語』に、「未だ生を知らず、いずくんぞ死を知らんや」とある。ひとりの人間は四十兆個近くの細胞で成り立っていて、細胞自身もまたひとつの生き物であるが、不思議なことにすべてが調和して働き、私は今生きているのである。人が、生まれて死んで、死んで生まれるということ自体、不思議なのに、我々はそれに気づかないで、死後の世界や余命を論じているのである。現代語で言うとかくだんだん論じくればくるほど宇宙の霊妙不可思議なることが分かりて実に老を忘れ9891│ 不思議は楽しい
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