二〇二二年度「井上円了が志したものとは」入賞作品集
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二〇二〇年~二〇二一年の間に、そういった状況に陥らなかった学生はどれほどいただろうか。あまりにも大きな教育格差を生んだ約二年、公益財団法人日本財団は「学校教育と九月入学」をテーマに一八歳を対象にした意識調査を実施した。それによると、「新型コロナウイルス感染症拡大を受けて最も困ったこと」へ約四割が学習面での周りとの差だと回答している。この結果から、学生に与えた影響の大きさがはっきりと読み取れる。躍進する時代を生きながら主体性を活かして社会を学び、現在のものの見方や考え方に新しい道を示してくれた円了と私たちは境遇が似ている。何か学ぶものもあるのではないだろうか。ここで、「円了がもし私たちの時代を生きていたら」を考える。最近流行しておいしいと評判のマリトッツォを二〇個以上食べて素知らぬ顔をしているだろう。さて、コロナ禍の経験を経たとして、私たち学生に説いてくれる道とは。主体性がこの先の人生でいかに重要か分かってはいるものの、主体性を持って行動することができなくなりつつある現状に、円了は何を思うだろうか。ずばり、「チャレンジ精神」だと私は思う。そしてその「チャレンジ精神」こそが、円了が志したものである。円了自身も、チャレンジ精神をもって自分の道を拓いてきたからだ。「自分の運命は自分で拓け」円了はこの言葉を学生に対して日頃から語ってきた。活動を自粛しろと言われても、好奇心だけは自粛するな。今の私たちにそう言ってくれるだろう。─ 64 ─

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