二〇二二年度「井上円了が志したものとは」入賞作品集
44/76

東洋大学附属姫路高等学校の部講評校長 大森 茂樹人工知能やロボットが重用されるようになるほど人間の特徴である「考える」、つまり円了先生が説かれた哲学することが教育の根幹であることを再認識する。円了先生の志を学ぶ機会は生徒達の人生の重要な礎を築くだろう。学長賞の岡本彩加さんは、円了先生について調べる内に、主体的に社会問題に取り組む姿勢や哲学が物事の判断の物差しであり自信を持つことに繋がると知り、他人の意見に流される自分を偽りの自分として表現し、自ら真理を追究し自分の意見を堂々と言える人になる生き方を学んだと語り、円了先生のように力強く生きていこうとする決意が表れている。岡本さん自身が人生哲学を持つに至ったことこそ、円了先生の最も望まれたことだと思う。優秀賞に輝いた、服部由奈さんは、摩訶不思議な現象は人間の心理によって生じたものであり、人々を正しい真理へと導くことが円了先生の志であると結論づけている。小野那有太さんは「自分の目」という主観的な考えと客観的な「他人の目」の両方から物事の本質に迫ることが大切であると例を挙げて説明している。谷口綾音さんは哲学を学び、物事の多様な見方を知ることにより、新しい自分に生まれ変わることができる人々を育成することで、人や国の不平等をなくすことにつながると述べ、それが円了先生の志すものであると結んでいる。山田翔子さんは円了先生の笑顔と表紙に書かれた強い確固たる信念に圧倒されたと冒頭で述べ、世界や人生などの根本原理を追及する学問、生き方、ものの考え方も哲学することであることに気づき、自分の行動次第で違う未来ができるから、今後の人生において挑戦を忘れず、努力したいと決意を述べている。生徒達の感想文を読むと、一三五年を超えた今も人々の心に火をつける井上円了先生の教育者として生き方とその根底にある熱き思いが、脈々とこの学校法人東洋大学に行き渡っていることを大変嬉しく、そして誇りに思う。─ 42 ─

元のページ  ../index.html#44

このブックを見る