二〇二二年度「井上円了が志したものとは」入賞作品集
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優秀賞服部由奈心理と真理東洋大学の創立者であり、「妖怪博士」という異名をもつ哲学者の井上円了先生が志したものとは、一体どのようなものだったのだろうか。当時、身近で起きていた不思議な現象を人々は妖怪の仕業だと考えていた。しかし、円了先生は一概に妖怪の仕業だとは言えないと考えた。そして、円了先生は世の中の摩訶不思議な出来事を、哲学を中心として解明していった。一つ一つの出来事に対し常に疑問を持ち、それを解き明かすことができるほどの知識を持っていた円了先生にしか成し得なかったことだろう。しかし、円了先生は世の中の不思議な現象は人の心理によって起きているということではなく、その心理に隠された「何か」を哲学によって解明することが真意だったのではと私は考えた。第一に、妖怪というものを円了先生のように哲学や心理学で証明するならば、妖怪が人間を認識したという考えが否定され、人間が妖怪を認識したという考えの方が当てはまる。なぜならば、「人間の心理」という大きな枠組みを作り出すことで、人間が妖怪を認識したという考えを証明するのは不十分ではないだろうか。「人間の心理」である喜び、悲しみ、憎しみ、そのような心の動きや変化が妖怪というものを生み出したと考えれば、人間が妖怪を認識したという考えを証明するのに十分だといえる。このような心の働きを円了先生は哲学と心理学で証明していき、妖怪学へと繋いでいったとすれば、人間の心理の根底には人間の真理があることを円了先生は追求していったのではないかと私は考える。東洋大学附属姫路高等学校一年二組─ 35 ─ 

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