は大きく変わることなく、未来へのレールに乗って進んで行く。しかし、運命を変えるには今あるレールを新しいレールに換えなければならない。そんな未知の未来へと進むためには、相当な努力と自分の根底からの強い意志が必要になってくる。私は今まで運命を変えるような努力、強い意志を持ったことがあるだろうか?本を読む前から掻き立てられ、井上円了に対する興味が一気に湧いてきた。大きく言えることではないが、東洋大学附属姫路高等学校に入学して井上円了について学ぶまで、私はその人物について知らなかったというのが現状だった。そして哲学についても知っていたのは名前だけで、その詳しい意味やどのような理念があって、どのようなことを学ぶのか全く知らなかった。この本に出会い、哲学というものがいかに大事なものなのかを知ることができた。哲学とは、「世界や人生などの根本原理を追求する学問」だと私は受け取る。井上円了は、幼少期から、自分の考えにブレることなく真っすぐで、他人と言動が違ったりしていても恐れることなく前へ進んでいた。一〇歳の頃、ある大雪の朝も通っていた塾に、途中履いていた下駄の鼻緒が切れても、鼻緒を直す時間のせいで、先生の講義が聞けなくなってはと裸足で向かったというエピソードがある。学問に対し探求し、エピソードにあるような強い意志を待って行動し、幼少より哲学に触れる。この本を読んで、その後の人生においても、哲学に対する情熱は変わっていないとわかる。哲学館の設立、世界の哲学を求めて世界一周へ。学校を引退してからも哲学を多くの人に知ってもらおうと全国を巡講。午前は移動、午後は講演、夜は揮亳という忙しい日常も哲学を広めるために惜しまない。私は今までの人生において、井上円了のように強い意志を持って努力したことがあるかを考えてみた。小学生の頃に、毎日マラソン大会に向けて何ヶ月も前から毎日走っていた。嫌だなと思う日もあったが、その一日が重要だと思い、雨の日も小雨になると走っていた。毎回タイムを計測し、日々の努力を重ねた結果、毎年入賞することができた。毎年の入賞は自分にとって印象深い。これは、自分の努力と強い意志で得た結果で、井上円了の言う「自分の運命」を、「自分で拓け」た出来事ではないかと考える。もしマラソン大会入賞の目標に向かって、日々努力していなければ、用意された未来のレールにのっていて、印象深い出来事─ 33 ─
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