怪)」に分けて考察している。これらの怪の中で、一番理解し難い妖怪が、真の妖怪「真怪」である。科学者は様々な実験や理論を駆使して自然世界の法則の解明を目指すが、真怪は心理や物理、その他の科学的な解明が及ばず、「我々の知識に超絶せる妖怪なれば、超理的妖怪である」としている。私は戦争とは、井上妖怪学に従えば、「超理的妖怪」であると考える。何故なら、究極的に国と国、人と人が憎みあい、凄惨な争いを繰り広げる戦争は、いかなる科学を以ってしても説明し得ず、その実体を解明し、解決する余地はないのだ。まさしく、円了が示唆する超難解な妖怪である。それ故に、「超理的妖怪・真怪」として、私たちは真に怖畏の念を抱き、フロイトの言う知性・感情レベルを超えた哲学的レベルで拒否し、「体と心の奥底」からわき上がってくる人間の文化的存在そのものから発する「平和の価値」に、心を向かわせなければならない。異才の学者である井上先生の「妖怪学」の理論や思考の学びを通して、真摯に戦争を恐れ、平和の尊さを次の世代に継承し、一人ひとりが世界平和の実現に向けて努力を続けていくことの大切さを教わったことに感謝の意を持ち続けたい。─ 29 ─
元のページ ../index.html#31