優秀賞池永一広 円了先生が「戦争と平和」を教えてくれた――アインシュタイン、フロイト、そして「井上妖怪学」二〇二二年五月一五日、沖縄県が本土に復帰して五〇年を迎えた。沖縄では、今も戦争の足跡が色濃く残っている。この半世紀で、米軍施設の面積は三分の二に減少したが、全国土面積のおよそ〇・六%に過ぎない県内に、全国のおよそ七〇%の施設が集中する中、米兵による事件・事故や、米軍機の騒音問題などの課題が残されたままとなり、過重な基地負担は変わっていない。世界に目を移すと、NATO(北大西洋条約機構)加盟をめざすウクライナに対し、二〇二二年二月二四日、プーチン大統領が軍事作戦を行うと演説した後、ロシア軍によるウクライナ各地での砲撃や空襲が開始され、凄惨な戦場と化した。今なお、大勢のウクライナ市民が国外へ避難し、米欧や日本の西側諸国は、相次いで過去最大の対ロ制裁を発動している。近年、世界ではイラン・イラク戦争、湾岸戦争、アフガニスタン紛争などが勃発したが、わが国は戦後七七年、平和国家として歩み続けた。団塊世代の私は、およそ戦争とは無縁の社会で暮らしてきた。しかし、ウクライナで勃発したロシアの侵攻が泥沼の様相を呈するにつれ、これまで深く考えなかった「戦争と平和」について熟考するようになった。「人はなぜ戦争を起こすのか?」、そして「戦争とは何なのか?」。前者のWhyについては、国家間の政治・領土・思想・宗教・資源などの争いがあるだろう。しかし、難─ 27 ─
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