優秀賞澤田 裕翔現代の陥穽と井上の哲学れない人々への思いやりは、現代を生きる私たちにも求められていることだ。早いもので、今年で教員歴十二年目を迎える。いまだに失敗や反省は絶えないが、井上円了先生のことば哲学の本質は、哲学的態度だ。井上円了の哲学から、そのようなメッセージを受け取った。哲学的態度とは、合理的に疑いうることは、疑いきるという態度だ。科学的精神、批判的精神を持つことである。いくら人口に膾炙されることであっても、鵜呑みにはしない。井上が建立した四聖堂で称えられるソクラテスに連なる態度だ。井上が、妖怪を研究したのは、まさに哲学的態度をを胸に、柔軟な頭とオープンマインドの精神を忘れず、生涯学び続ける教師として、残りの教員人生を全うしていきたい。啓発させるためであった。明治時代の当時、世間で妖怪は信じられていたが、井上は一つ一つ丹念に分析し、その正体が自然現象や心理的要因であることを明かしていく。哲学とはけして、テキストを暗記することではなく、真実を問い続ける姿勢なのだ。井上は、身分制から解き放たれたばかりの明治の世で、人々の精神的自立を願った。そのために「余資なく、優暇なき者」の学べる場づくりに奔走した。評論─ 21 ─
元のページ ../index.html#23