二〇二二年度「井上円了が志したものとは」入賞作品集
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の目で真実を確かめることの重要性を体現していたように感じる。旅に出る以前、就職活動に対して、自分の将来、取り巻く社会に対して、イメージでしか考えられていなかった。しかし、旅に出たことで、自分の将来は決して仕事だけで決まるものではない。どんな仕事に就くかの他に、誰と働くか、どこで働くか、何のために働くか。仕事に関することの他にも、どこに住むか、どのような暮らしをするかなど、自分の将来の構成要素はたくさんあることを知った。就職活動に関しても、思っていたより人事の方は人間的な部分を見てくれていることや、就職活動のやり方もひとつじゃないことを知った。つまり、実際にやってみないと、見てみないと分からないことがこの世には山ほどある。現代社会のひとつの特徴として、情報拡散社会というものがある。年収ランキングや、ホワイト企業指数ランキング、社員定着率ランキングなどが出回っていることもこの特徴を裏付ける材料の一つだろう。私はここにこそ、あらゆる迷雲が漂っていると考える。私の夢は自然に囲まれた自給自足の暮らしをすることであり、就職先はツリーハウスを作る会社である。もし、旅以前の私が見ていた迷雲を頼りに進路選択をしていたら、確実にこのような結果にはなっていなかった。旅の道のりの中で、様々な人に会い、日常に触れ、それは次第に数々の憧れとして、自分の中に蓄積していった。自分の目で見て考える営みに終わりはない。私はこれからも迷雲に惑わされず、人生の選択を続けていきたい。また、いつかその素晴らしさを伝えることもしてみたいと考えている。今、自分の学生生活の集大成として、学校への恩返しとして、東洋大学の一、二年生に対し、進路を考えるイベントを企画している。自分はまだまだ自分で考える営みの入り口に立ったばかりの新参者だが、いずれは円了先生のように人をいい方向へ導くことができる人になりたいと考えている。─ 18 ─

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