二〇二二年度「井上円了が志したものとは」入賞作品集
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優秀賞漆原美咲「哲学を通じて学ぶ心」井上円了は、「諸学の基礎は哲学にあり」という言葉を残し妖怪学という学問を追求し続けた人物である。円了の研究していた妖怪学は不可解な事象の大体のものは道理上証明できるものとして人々に伝えるものであった。しかし、本当に円了の伝えたかったことは人の心の働かせ方の重要性である。例えば、「こくり」という明治に流行した霊を呼び出し質問に答えてもらうという占いがある。実際に、信じた者は多く社会問題にまで発展するほどであった。しかし、円了は「こくり」は霊のようなものが起こす不思議な現象ではないことを証明した。「こくり」は、狐狗狸の霊を呼びだし身の回りの事象を霊の動きから確かめることではなく「こくり」の示していた答えは体験者の心の奥を表していると実験から人々に伝えた。これは、信用深い人々の心が「こくり」を成立させていたことを円了は証明したのだった。円了によってこれまで信じてきたことを今一度考え直し、心の成長につなげた者も多かったのだった。現代のネット社会やいじめなどにも「こくり」と同じ心の働きが起こってしまっている。何かわからないものに対して私たちは恐怖心や敵対心などマイナスな考え方を抱いてしまいがちだ。例えば、夜の暗い部屋でお化けのようなものを見たとする。その瞬間は恐怖心が大半を占めてしまっている。しかし、お化けだと思っていたものを確認したら壁にかけていたコートだった時、コートだと分かれば怖いという感情はなくなる。このようなことはネット社会においても同じことが起こっているといえる。正確ではない情報までも社会学部一年─ 12 ─ 

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