6東洋大学で組織的な井上円了研究が始まったのは、昭和53年(1978)である。それまでの研究の蓄積はなかったが、大学が研究費を出し、これに応募して、有志による井上円了研究会ができた。この研究会は3つの部会で構成され、第1部会は「井上円了の学理思想」、第2部会は「井上円了の西洋思想」、第3部会は「井上円了の国内における実証的研究」をテーマとしていた。前者の2つの部会は著作を対象とした研究であったが、第3部会は社会学と哲学の研究者で組織され、早速、生誕の地である長岡市での調査を開始した。新たな資料収集がはじまった。その後、昭和54年から「『井上圓了先生の書』遺墨集とその研究」の組織が活動を始めて、遺墨の収集に着手した。同時期に、附属図書館によって井上円了の著書や資料が整理されるようになった。それまで一般書架に置かれていた円了の著書を、新たに設置した特殊資料室に集めて、残されていた手稿などとともに整理作業が開始された。さらに、昭和54年4月に、東洋大学創立百周年記念事業委員会規程が施行され、昭和57年6月に東洋大学創立100年史編纂委員会規程が施行されて、100年史関係者による創立者·井上円了の資料収集も始まった。東洋大学では、昭和12年に『東洋大学創立五十年史』、昭和42年に『東洋大学八十年史』が刊行されたが、2回の編纂資料は散逸して継承されなかったので、100年史の資料収集をゼロから始めなければならないという事情があった。そのため、資料収集と同時に関係者からの聞き取り調査も行われた。昭和62年、東洋大学は創立100周年を迎えた。それまでの円了の研究組織はその成果をまとめて刊行を終えて解散したが、100年史の関係はその一部が刊行されただけで、編纂を継続しなければならなかった。平成2年(1990)、「伝統の堅持と歴史の創造」を掲げた塩川正十郎理事長の主導で、法人立の「井上円了記念学術センター」が設立され、円了の研究と100年史の編纂の2つの組織は統合され、それまで収集された資料は新たな組織に継承されることになった。また、平成17年には井上円了記念博物館が設立され、資料を展示·公開する機関が誕生した。そして、平成26年に教学組織の常設研究機関として「井上円了研究センター」が設立された。長年にわたって収集された資料はここに集約され、それをもとに研究活動が継続されることになった。今回、円了没後100周年を記念して、収集された資料のなかから、特別なものを選別して、1冊のカタログが解説文つきで刊行されることとなり、先人の取り組みに感謝するとともに、カタログの企画·編集を担当された方々に謝意を表したいと思います。(三浦 節夫)総論東洋大学における井上円了の研究
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