35貝殻のキセル、動物の角製パイプなど、訪れた国や土地ならではの材料の喫煙具が多いのも注目すべきところである。嗜好品だからこそ、遊び心あるものや変わった形を集めた円了のセンスは、今日見ても瞠どうもく目に値する。①「カエル·蛇·ナメクジ」のたばこ入れ、②人面のたばこ入れ(鳥取県鳥取市)、③墓石型のたばこ入れ、④「火用心」のたばこ入れ(緒締めは2つのどくろと木魚、鬼面と般若面様のもの)。⑤水牛の角のパイプ(南アフリカ、明治44年)、⑥蕃ばんざくろ石榴の実のたばこ入れ(台湾、明治44年)、⑦パイプ(ノルウェー、明治44年)、⑧貝殻のキセル(三重県志摩)。(北河 直子)024喫煙具明治時代に3回の世界旅行をなしとげ、日本国内も全都道府県に講演でおもむいた井上円了が旅先で蒐集したものは、総点数800点以上にのぼる。喫煙具は70点近くあり、カッパ、カエル、鬼、般若、人面という変わり種や、ドクロ·骸骨モチーフという円了が好んだデザインが多い。好事家好みといわれるようなものとは異なるが、カエル·蛇·ナメクジの「三すくみ」の関係にあるものや、「火用心」と縫い取られたたばこ入れ(緒締めの骸骨後頭部には「死用心」と彫られている)、墓石型たばこ入れの卒そとば塔婆にくくられた骸骨は、寺生まれで生死が身近にあった環境と、「妖怪博士」とあだ名された妖怪学者の視点があわさった喫煙具といえよう。⦿竹、木、動物の角、象牙、牛皮、植物の実、貝殻など ⦿山﨑記念中野区立歴史民俗資料館蔵①③④②⑤⑦⑥⑧
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