18る。そして、仏教も含めた5つの因明の検討のほか、国土、学派、思想、時代の分類を行っている。インドの古典学問については、いわゆる六師外道と足目(アクシャパーダ)、迦毘羅(カピラ)の学説を仏教典籍から分析している。そして、インド神話については、外道がどのように仏道に従ったかという面を記している。本書では、日本で仏典を通してインドの外道がどのように説かれてきたのかを明かしているのみであり、当時ヨーロッパに伝わっていた中世以降のインド思想については記述されていない。しかし言い換えれば、西洋の学問が入る以前の日本人が、インドの仏教以外の思想をどのように理解してきたのかを系統立てて解析したものといえ、その唯一の書と称しても過言ではない大著である。(出野 尚紀)010外道哲学緒言によれば、井上円了は、日本仏教の組織系統を撰述しようと企図し、「仏教哲学系統論」と題して、これまで誰も行なわなかった日本仏教の全歴史と全思想を余すところなく語ろうとした。近代欧米のアジア研究は参考とせず、これまでに日本で翻訳·刊行された文献を中心に、明治維新以前、もしくは神仏分離令以前の仏教を分類し、インドと中国の思想がどこまでであり、どこからが日本独自の仏教であるかを分析しようとしたものである。この『外道哲学』は、「仏教哲学系統論」の第1編として、インドで生まれた仏教以外の思想が、仏教にどのように取り入れられたのかを明らかにしようとしたものである。その宗派分類には、日本の伝統的な分類法だけでなく、ヨーロッパ哲学の分類法を援用した部分が見られるオリジナルなところがあ⦿井上円了著、哲学館講義録出版部発行 ⦿明治30年(1897)2月22日発行⦿東洋大学井上円了研究センター蔵
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