CATALOG 井上円了
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17昭和62年(1987)から東洋大学で刊行された『井上円了選集』(第16巻〜第18巻)に収録されるに至った。内容は緒言·総論、理学部門、医学部門、純正哲学部門、心理学部門、宗教学部門、教育学部門、雑部門の8部門から構成されている。円了は自然現象によって実際に発生する異常現象を「仮怪」、誤認や恐怖感による錯覚によって生じる現象を「誤怪」、利欲や権謀術数といった人間の意図によって生ずるものを「偽怪」に分類し、さらに仮怪は物理的に解釈できる各種の異常現象である「物怪」と、幻覚·妄想や異常な精神現象から生ずるものを「心怪」に大別できるとしている。これら以外に、物質や精神の本源であり、世界そのものの不思議である「真怪」があるとしている。真怪以外の妖怪については諸学によって分析できるが、真怪についてはその認識のために坐禅·観法を奨励しており、近代合理主義の立場による迷信打破のみを目的としていたのではないことは注目に値する。(甲田 烈)009妖怪学講義 (合本第1冊〜第6冊)大著であり、妖怪博士·お化け博士と通称される井上円了の名を不動のものとした代表作。その初出は明治26年 (1893)11月5日の『哲学館講義録』から「第7学年度妖怪学」として開始され、翌年の10月20日にかけて48回にわたり掲載されたものであり、本書はそれを全8巻全6分冊の合本としたもの。本書の最大の特徴としては、その広大な文献渉猟にある。日本·中国·インド(仏典)を中心に明治期の新聞·雑誌を合わせるとそれは1640余に達し、内容も天文·地誌·医学から怪談·異聞·紀行文·故事来歴·語源などに及んでいる。そして思想的には西洋哲学への言及はもちろんのこと、仏教·儒教·神道·道教と広範にわたる。それに加え、明治23年から26年にかけての第1回全国巡講によるフィールドークの成果や、『実地見聞集』といったノート類も生かされている。『妖怪学講義』は円了の生前も版を重ね、明治30年には明治天皇に奉献されて、天皇はこれを愛読したと言われている。戦後には⦿井上円了著、哲学館発行  ⦿明治29年(1896)6月14日発行 ⦿東洋大学井上円了研究センター蔵

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