15白黒2種の区分は「白黒二派」と呼ばれ、それぞれの票は「票員」と呼ばれる。将棋の王将のような位置づけにある、両派の主票は「主員若くは派主」と称し、他の「属票」は「属員若くは派属」と呼ばれるなど、思想的な立場の相違と哲学的な論争を体感するボードゲームになっている。最初は前方にしか進めない属票は、相手側の一番奧まで進むと将棋の歩兵のように裏返り、主票と同じように後方に進むことができる。唯物や唯心の探求が限界点まで進んで「理」に達すると、より自由な思考ができるようになるのである。こうしたところにも、円了のユーモアと思索の深さが感じられる。(岡田 正彦)007哲学飛将碁哲学の通俗化と実行化を目指した井上円了が、遊戯を通して真理を探究する精神を一般に普及するために考案したボードゲーム。飛将碁と名づけられているのは、2陣に分かれた相手方の駒(票)を飛び越すことによって、手駒を取り合うからである。円了のアイデアを丸山福治がまとめた「指南」によれば、この将碁の目的は次のようなものである(丸山福治編『哲学飛将碁指南』、哲学書院、1890年、p.1) 。此碁の目的は教育上哲学の名称を教授する一助となるにあればその票称は哲学上の定語を用ひ黒票は唯物、白票は唯心、主票は理想の称を用ひ相争ふも論理上の争なり其勝敗あるも論理上の勝敗なり⦿井上円了考案、哲学書院発売 ⦿明治23年(1890) ⦿東洋大学井上円了研究センター蔵
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