佐さ佐木喜き善ぜ(一八八六~一九三三) 民俗学者平常倉の三つの倉庫。災害や行事のために食料を保存する倉。)を対象としていたので、もともと民俗柳田國男の『遠野物語』は、明治四三(一九一〇)年に発表された岩手県遠野地方に伝わる伝承をまとめたものです。これが後に日本の民俗学の嚆矢とされるのは、主に旧土渕村(現遠野市土渕町)とその周辺の民間伝承と行事をそのまま記録したところにあります。柳田は東大法学部から農商務省に入り、当時は農政官として全国の農村を回り啓発講演活動をしていました。こうした活動によって、地方の実情を知り、民俗・民情に興味を持ったとされています。柳田の大学における研究は、「三倉」(義倉・社倉・学的な興味をもっていたのでしょう。一方、佐佐木は土渕村の出身で、上京して哲学館に入学しましたが、後に文学に志 さき ん 続けていく中で、明治四〇(一九〇七)年頃に柳田と知り合い、遠野の伝承を語ったよして早稲田大学に転じました。その後、き鏡ょう石せきの名で小説を発表するなど、文筆活動を19
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