ブが、横長の開口部と相まって、高さよりは積層感を強調する構成になっています。明らかにデザインよりは機能性を強調したデザインです。ここでは、様式的なデザインと機能的なデザインが併存混在した状態のまま放り出されています。戦後日本で殆ど絶対的な説得力を持った経済性と機能性という要請を背景に、ゴシック様式の影響の強い講堂と図書館を両脇に従えつつキャンパスへのアプローチの正面を担わなければならなかった困惑がそのまま表現されたデザインです。しかし、同時に、何処となく人間的で、今日から振り返ると実に愛すべき建物でもあります。本館校舎が出来たころの東洋大学が、哲学館開設時に井上円了が構想した学舎の完成形に最も近い、その意味で、最も東洋大学らしい姿をしていたのではないか、私はそう考えています。まず、白山通りに面した門が、現在の八号館の正面あたりになりますが、京北学園と東洋大学を一体として捉えた学舎の正門として中学生から大学生までの幅広い年代の学徒を迎えます。門を入ると、京北学園を貫く真直ぐなアプロー 三 敗戦から高度成長期まで 29
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