東洋大学史ブックレット10
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ものと推察されますが、後のモダニズムの時代を予感させるデザインです。この建物が、その後建設される図書館や講堂と少し異なった形式になっている理由は、中央の縦リブで強調された部分の扱いにあります。既に触れた様に、図書館も講堂も同じ形式ですが、この二棟は、デザイン上の正面が正面玄関としての機能を持っていました。垂直性の強調は、同時に、正面入口の存在を強調する役割を担っていました。一方新校舎の方は、デザイン上の正面には正面玄関がありません。手前の立木の左側に、通用口とおぼしき出入口が一ケ所あるばかりです。新校舎の正面玄関は、デザイン上の建物正面には設けられていないのです。建築的な正面と機能上の玄関の間に齟齬が生じていると言って良いでしょう。震災を契機に、特段の意識を持って取組まれるようになった耐震耐火性能の追求が、確実に構造費用を増大させ、装飾的な配慮を追いつめていきます。同時に、建築の設計姿勢も、建築用途への従属を深めていきます。新校舎の建築的構成は、こうし 二 白山移転から敗戦まで  21

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