東洋大学史ブックレット10
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の影響があると考えるべきでしょう。ハーフティンバー風の外壁は、日本の在来木造の真壁構法に近い表情になりますが、日本の真壁構造には、写真の切妻部分に見られる様な斜材は用いられません。一方、屋根は今回も桟瓦の様です。近代初頭のこの時期、桟瓦は最も汎用的な屋根仕様(防水仕様)でしたし、近世以来の日本の建築を特徴付ける屋根材ですから、この屋根に伝統的な印象を持つのは極めて自然な成り行きですが、近年の研究で、桟瓦自体は近世初頭にオランダで発明され日本に紹介された瓦であったことが明らかにされています。実は、こうした点にこそ日本の建築の多様性と豊かさの源があります。建築様式や技術に関する限り、私達が伝統的なものと考えている表現や技術の多くが、こうした来歴を持っているからです。即ち、私達は、色々な事情から移入された技術や表現を、適時在来構法に組込み汎用化し、更に時間を掛けて洗練を加え慣れ親しむうちに、それを伝統的な表現として認識する様になる傾向が強いのです。先に言及した書院造もその様な経緯をもっています。ここでは、建築史から見た東洋大学の変遷12

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