東洋大学史ブックレット10
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の事実を、後進国の現実と捉え、克服すべき矛盾ではなく耐えるべき齟齬であったと考えています。因みに、この齟齬を矛盾と捉えて排除しようとした時代がありました。それは、昭和初期、戦時下での事でした。戦時体制が、事実上絶望と狂気の時代であったことを考えると、明治期のこの天真爛漫さは評価すべき姿勢であったと考えるべきでしょう。私が、耐えるべき齟齬と申し上げた所以です。この校舎は、明治二九年一二月、隣接する郁文館の失火による火災に巻き込まれて焼失します。この時、井上円了が収集した貴重な書籍も、その一室を占めていた図書室と共に焼失してしまいました。建築史から見た東洋大学の変遷10

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