東洋大学史ブックレット9
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ものです。園路の所々には、散策中の休憩所として、また、庭園を眺望する展望所として、茶亭、東屋なども設けられます。円了博士が哲学を勉強した東京大学のキャンパスにも加賀の前田藩が整備した回遊式庭園が残されています。(2)自然主義当時は、文学や芸術の世界でも「自然」が見出された頃でした。明治三一年に、国木田独歩は、武蔵野を主題として、その風景美と詩趣を描きつくした著名な随筆作品を公表しました。国木田は、東京近郊の里地里山(人間の生活圏と自然とが入り交じる田園地帯)に毎日のように出かけては逍遥した体験にもとづいて「武蔵野」を書き上げたといわれています。その中の「武蔵野を除いて日本にこのやうな処がどこにあるか。北海道の原野にはむろんのこと、奈須野にもない、そのほかどこにあるか。林と野とがかくもよく入り乱れて、生活と自然とがこのやうに密接している処がどこにあるか。」と14) 哲学のテーマパークとしての哲学堂公園32

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