淵に沈み、先生多くして生徒屋根に登る」という格言を自分で作っています。また、「今の学者は貴族で困る、飯は食べても米知らず……」といった歌も作っています。けっして皮肉っぽい人ではなかったようですが、多数の学生が実際を忘れて空論に走りがちであったことから、こういった風潮を矯正して日本の社会を少しでも良いものにしたいという一心から出たものであるようです。また、昭和一○年代に哲学堂の堂主だった石川義昌氏の談として、若かった頃のある日、円了博士から「今日は大御馳走をするから久しぶりに哲学堂に来ないか」と誘われていそいそと遠路哲学堂を訪ねたところ、その日の夕食はアジを焼いたのが一匹だけ粗末な膳に加えてあったのには驚いたというエピソードがあります。前島康彦氏は、この出来事を「一汁一菜だけが夕食だとすれば、朝食は汁だけだったのかもしれず、焼き魚一匹をつけることは、(哲学堂の整備や運営で資金繰りが大変であった)円了博士にとっては大御馳走であったに違いないのである。」と評しています。しかし、これは円 二 哲学堂公園が目指したもの1) 29
元のページ ../index.html#33