ことであっても、ただ単に棒読みをして教えるようなやり方では相手方に対して伝わるものも伝えることができません。こういった意味においては、教える以前の準備運動として、まずは教えるべき相手方の興味や好奇心を引き出すことが重要になってきます。場合によっては、びっくりさせるような演出も必要になってくることでしょう。円了博士の著述を読み、哲学堂の作りを見た印象や感想として、私は哲学堂を構成する七七場の奇抜な意匠や着想は、このような意図をもってデザインされたものではないかと考えているところです。初めて哲学堂を訪れた人は、哲学堂の意匠に驚愕し困惑することでしょう。そして前島康彦氏が述べているように、確かに「二度三度と訪れて何なのかを探りたくなる」というのが人情かと思われます。円了博士のお茶目なところというか、遊び心に富んだ柔軟な発想がうかがい知れるところです。このことを裏付けるかのように、円了博士は、しゃれっ気のある道歌などを数多く残しています。「船頭多くして船山に登る」という格言をもじって、「学者多くして国 1)哲学のテーマパークとしての哲学堂公園28
元のページ ../index.html#32