園として建設するに当たっての決意を詠んだ「哲学堂所吟之一」というタイトルの漢詩があります。原文は「草鞍竹杖席難温。浮浪身猶浴聖恩。沐雨椀風知世態。食疏飲水味天尊。曲肱枕上眠能熟。容膝慮中楽却存。無位無官吾事足。終生不敢伺権門。」ですが、いささか難解であることから、ここでは「井上円了と哲学堂公園一〇〇年」の中で三浦氏が読み下した一文を紹介します。「草鮭と竹の杖で旅を続けて、席の温まるひまもなく、そんな浮浪の身でありながら、なお天皇の恩恵に浴している。雨に髪を洗い、風にくしけづりながら、世のさまざまな姿を知り、そまつな食事をし、水を飲み、仏の恵みを味わうのである。肘をまげて枕とし、眠ることよく深く、膝を入れるほどのせまい庵のうちにこそ、楽しみがかえってある。なんの位もなく、いかなる官職もなく、それで我がことは充分であり、身を終えるまで、あえて権力のある者のところには行かないのである。」まさに、三浦氏が指摘しているとおり、この漢詩は、円了博士の信念の表れであり、あえて権力に近寄らず、自らの力と恵みによって 一 哲学堂公園とは2)9
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