この三回目の世界旅行は、『南半球五万哩』という紀行文の書名にもあるように、新世界のオーストラリアをはじめとする新興国ですが、逆に女性の社会進出に見られるような新たな社会の規範の創出にいち早く着目した円了の柔軟な思考が見て取れます。世界人としての広範な視野を持った円了の面目がうかがわれる点でもあります。こうしてこれら三回の旅行によって東洋大学の礎が固められていったのですが、この旅行の概要をまとめると次のようになります。校長を辞職し、名誉学校長になっており、実際の大学運営にはかかわっていませんが、帰国の五年後の大正五年(一九一六)に東洋大学が他大学に先駆けて女子学生を受け入れたことは、この円了の見聞にもとづくことは想像に難くありません。 井上円了の世界旅行チリ国婦人40
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