テルブルクに到着し、そこで元哲学館の講師をしていた八杉貞利に会い、様々な便宜を図ってもらっています。八杉は帰国後、東京外国語学校(東京外大)の教授となり、多くの弟子を養成したロシア文学者の草分けです。円了は再びベルリンに戻り、そこで哲学館講師の中村久四郎と再会したり、大西洋を横断してアメリカに渡り、ハーバード大学の卒業式に参列し、そこで哲学館出身の高木真一君と会ったことも誇らしく語っています。高木は私費留学生でアルバイトをしながら苦学して成績優秀な学生として無事に卒業しました。このことから、円了は高木を「日本青年学生の規範とするに足る」と讃えています。以上のように、この旅行は仏蹟や哲学の関連する場所を訪問していますが、各地で活躍する哲学館の卒業生に出会うことによって、哲学館教育の拡充を実感する旅になったはずです。また、本書の最後に「欧米巡見所感」がありますが、そこでは日本は東洋の一強国として知られますが、欧米に比して見ると遙かに遅れていて「東洋に覇たる資格を有 井上円了の世界旅行34
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