東洋大学史ブックレット8
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額などをあげていて、まるでルポルタージュのような内容となっています。そのような調査を通じて、キリスト教が民衆の中に根ざしていて、それぞれ多様なあり方でありながらも、生活の基盤になっていること、キリスト教が独自の宗教教育を施していること、などが大きな関心を引いたようです。円了は本書を書くにあたり、自らを「政教子」と名乗っていますが、この政教とは「哲学」のことであるといいます。しかも、「理論哲学」に対する「実際哲学」のことで、内容上は「宗教学」と「教育学」にあたると述べています。この二つの学問体系こそが、国の根幹をなす「無形上の文明」を研究対象とするもので、最も重要な領域であるとも述べています。そして実際にこの領域について社会に働きかけることが、円了の哲学教育、哲学館の開設という行為につながっていたことは明らかです。本書のタイトル『欧米各国政教日記』は、この政教を学び取ろうとした円了の姿勢を明示するものです。 三 円了の三回の長期旅行とその意義 23

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