東洋大学史ブックレット7
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を開きました。こうして中央と地方の交流が行われ、地方も少しずつ近代社会の内容を整えていったのでした。地方社会の近代化のなかで、円了はこれを担う人材を育てようとして、講演旅行を精力的に行ったのでした。円了の目指したものは、新しい近代社会の担い手として、独立自活の人材を育成するということであったと思われます。円了があげた徳目は、通俗的なものでかならずしも目新しいものではありませんが、それでも江戸時代から出てきたばかりの人びとを近代社会へ導くには必要なものでした。また一朝一夕に普及するものでもなかったのです。円了は、ほんとうの意味での国民が成長することを望んでいました。もちろん円了にはもう一つの側面があります。それが宇宙主義という普遍主義でした。現在の言い方なら世界市民主義とでもいえばよいでしょうか。そのことは別のところでふれられるので、ここではこれ以上論じないことにします。 六 おわりに 35

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