だったのでしょうか。他の教え子の話では、円了は大変倹約家で、国内旅行では汽車はたいてい三等車で、弁当はお握りでした。また見送り出迎えはよろこばなかったといっています。ちょっとした旅行でも、多くの見送りを集めて、勢力を顕示するようなことは嫌っていたのでした。円了の鞄は有名なもので、縦二尺位の薮医者のもつようなもので、何十年と同じものを使用していました。なかには筆・紙・墨池・手帳・切手・羊羹といった円了の七つ道具というようなものがあり、授業の五分間休み、汽車の待合の間など寸暇であってもこれを取り出して、手紙の返事、雑誌の原稿、巡回の日記などを書いていたそうです。現在、大学には円了が旅行に使ったカバンが残されています。写真に紹介しておきます。カバンは、革製で手提げのところがとれてしまった使い古したものです。幅二 五 旅行道具と旅の様子 25
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