に属するものにして、これを約言すれば不思議と異常を兼ぬるものです」と定義しています。そして、妖怪は人と世によって異なるもので、妖怪の有無は物ではなく人にあり、妖怪の標準というものは、人の知識や思想であると指摘します。したがって、「妖怪そのもののなんたるを究めてこれに説明を与えることが、すなわち妖怪学の目的」であるといいます。その説明を与える理論を、円了は哲学を中心とし、これに理学、さらに医学などを加えて、これらの学問の理論とその応用で構築しようとしました。この妖怪学の目的は、円了の理念である「護国愛理」であり、真理を愛する愛理の精神にもとづき、妖怪の原理をきわめて、これを実際に応用して世間の人々の「迷苦」をいやし、世の教えの改良をはかることは国家を護り発展させることに他ならないと主張しました。妖怪学で円了が特に重視した分野は、教育と宗教でした。民衆の「心の雑草」を除去する「妖怪学は宗教に入る門路であり、教育を進むる前駆である」と位置づけています。 井上円了の妖怪学32
元のページ ../index.html#36