六 『妖怪学講義』の定義た。またほかより先生に話しかけても、一向に聞こえないようで受け答えもしませんでした。先生の奥様はこの注意凝集の状態を見るたびに、「また例の考えごとが始まった」と言われました。明治二六年に一年間にわたり哲学館の講義録として二四冊発行されたものは、明治二九年六月に単行本の『妖怪学講義』として六冊にまとまられて、再び世に出ました。それだけ注目されたものであったのでしょう。円了は「妖怪とは異常、変態にして、しかも道理で理解できない、いわゆる不思議 六 『妖怪学講義』の定義 31
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