以上が一〇年間にわたり円了が収集した資料でした。例えば、第四の文献については、山内瑛一氏の「妖怪学参考図書解題」(『井上円了選集』第二一巻所収)でつぎのようなことが判明しています。この解題によれば、参考および引用した文献に直接・間接のものがあり、それらに明治期の雑誌・新聞などを加えると、その数は一六四〇余りに達します。その内容は、日本、中国、インド(仏典)が主で、時代は古代から江戸時代までを範囲とし、有職故実・故事来歴・語源を調べ、天文・地誌・医学を含めた天・地・人・物・事に関すること(吉兆禍福や善悪にはじまり神仙・卜筮・夢・鬼・霊魂・草木・昆虫)に及んでいるのです。そして、一般に伝わる風俗、巷談、教訓、人物評伝、紀行文、教訓、名言、秘術、怪異小説、怪談、異聞、奇聞、変化、民話、説話、俗話、雑話、伝奇小説、奇談、奇事、奇聞、珍説、佳話などと幅広く考証していますし、思想としては儒教、道教、仏教、神道、修験道を対象としています(円了の妖怪関係文献は現在、東洋大学図書館の「哲学堂文庫」 五 哲学館の危機と妖怪研究 27
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