東洋大学史ブックレット6
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このとき、円了は具体的に哲学館の新校舎の建設に着手していました。ところが、この新校舎は九月一一日に完成を前に台風によって倒壊してしまいます。円了は二週間後に再度の建築に着手します。それを聞いた海舟は円了を呼んで激励し、高額の寄付金を渡したのです。こうした海舟の支援と指導もあって、哲学館の新校舎は完成しました。しかし、二度にわたる建設費は寄付金で運営していた円了にとって大きな負債となりました。円了は海舟にその胸中を伝え、海舟は円了を指導して、負債の解消について相談しました。その中から出された策が、円了が全国各地で講演し、そして寄付を募るというものでした。円了は明治二三年一一月二日、全国巡回講演の旅に出かけました。この全国巡講は四年にわたり、円了は、北は北海道から南は九州までと全国を一周しました。こうして、大きな負債は解決されました。円了はこの全国巡講の体験から哲学館の経営者としての自覚を新たにしました。そ井上円了の妖怪学   24

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