り」は霊によるものではなく、人間の「予期意向」、つまりこうなるだろうという潜在意識、それと「不覚筋動」、つまり無意識に手に力が入る、この二つで動くものだということを明らかにしました。こうしたことを、円了ははじめに論文で書き、つぎに『妖怪玄談―狐狗狸の事』として明治二〇年五月に出版しました。これがのちに「妖怪博士」と呼ばれる円了のデビューになったのです。その後も円了は、東京の駿河台での白狐事件、甲州の事件などの解明にあたりました。そして、縁起の悪いと言われることを自らの自宅で実験しました。例えば、「死」につながる嫌われる四四四の電話番号を選んだり、自宅を鬼門の方向に建てたり、北枕で寝たりしたのです。このように、円了は積極的に妖怪の解明にあたりました。 井上円了の妖怪学18
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